2021.07.30

第10回私的写真集選手権 講評座談会

第10回私的写真集選手権には55作品の応募があり、本誌8月号で発表した通り、最優秀賞をはじめとする各賞が決定しました。受賞された皆さま、おめでとうございます。また、ご応募いただいた皆さま、ありがとうございました。
ここでは審査にあたったコバヤシモトユキ氏、松田忠雄氏、北條俊正氏、本誌編集長・藤井による講評座談会の採録を掲載致します。
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本誌編集長・藤井(以下、藤井):10年目を迎えた今回、残念ながら最後の私的写真集選手権となりました。
コバヤシモトユキ(以下、コバヤシ):むしろよく続きましたね!
藤井:本当ですね。初めは、Twitterで「オリジナル写真集のフリーマーケットのようなものができないか」とつぶやいたのが発端でした。「私的」と名付けたのはモトユキさん。
コバヤシ:その時、アシスタントが中国籍の人だったんで、「私的」ってつけたの。そしたら、藤井さんが、「選手権にしましょう!」って言ったんだよね。
藤井:いきなりフリーマーケットでは作品が集まらないだろうから、コンテストにしようと思ったんです。今となっては、アマチュアの人がみな写真展などでオリジナルの写真集を販売してますよね(笑)。
北條俊正(以下、北條):そう。10年ですっかり状況が変わった。
松田忠雄(以下、松田):始まったよね。
北條:しかも、それで生計を立てている人すらいる。
松田:同人写真集即売会の「ノンバーコードブックス」とかもそうだしね。素晴らしい写真集文化を牽引したんじゃないですか?
藤井:そうですね、そしてひとまず今回で役割を終えるという。では、その最後の私的写真集選手権の審査を終えて、入賞した作品を中心に講評していただきましょう。第10回の最優秀賞はbagleさんの『Contrail-Prequel(コントレイル・プリークエル)』が受賞しました。四季を通じて様々なロケーションで捉えられたモデル・麻巳子さんのポートレートと、風景や事物を捉えた写真で綴る100ページにも及ぶ大著です。この『Contrail-Prequel』が「前編」にあたり、さらに同じボリュームの『Sequel』(後編)があるわけですが、『Sequel』も審査では高得点でした。
コバヤシ:この二冊はどっちが受賞してもおかしくないという感じですね。
藤井:どんなところがよかったですか?
コバヤシ:撮れないよね、プロでは。僕はプロが撮れるものにわざわざ賞をあげるのは違うな、と思っているので。プロが撮れないような、何かの可能性をいつも見てるわけなんです。で、僕にはこれは撮れない。リスペクト! リスペクトです!
北條:モデルの麻巳子さんの技術に脱帽ですね。「画面の中に生きる」というコツを知っておられる方ですよね。天性の感じがする。
藤井:僕は写真審査でもそうだけど、あまりモデルが誰というところに頓着なく作品に埋没してしまいがちだから、最初、てっきり若い夫婦のイチャラブかなって思ったぐらい(笑)。親密な雰囲気が演出されていて、そこにびっくりした。だから、北條さんが言うように、創作の中で活き活きと生きているというのはよくわかる。
北條:モデルとしてもそんなに簡単なことじゃないですよね、そんなこと。映画とかじゃないから、カメラの周りにスタッフやら音響やらがわんさかいるわけじゃない。カメラマンと一対一やったりもするやろうけど、そんなふうにレンズを向けられて、普通に呼吸したり、そこからそこまで歩く、という行為が普通の人間にはできないんです。だけど、それをやりきってるわけで。天才やんけ!
コバヤシ:彼女は僕も撮影したことがあるけれど、撮れないですよ。それは撮った彼の力です。bagleさんの力。
北條:表情の一個一個というよりも、このモデルさん、心拍数を自分でコントロールできているように思う。なかなかむずいんですよ。相当の運動神経がないと! もちろん撮影者のカメラマンさんもめっちゃうまいですよ、そりゃ。
藤井:うまいよね。
コバヤシ:でも、普通は同じようなものを2冊応募すると、打ち消しあっちゃって、印象に残りにくくなったりするものだけど、bagleさんのは二つとも、いいよね。
松田:それにしてもここまでモデルに話が及ぶ写真集も珍しいよね。今までにないんじゃないかな。確かに素晴らしいモデルだと思うし、写真も素晴らしい。あと、デジタルとアナログを行ったり来たりしている感じも、今っぽくていいよね。
藤井:かなりのページ数だけれど、写真がうまくて飽きないですね。
北條:僕は飽きる、飽きないで言うと、『Sequel』の方はカメラ目線ばっかりやなと思って、それでちょっと飽きたんです。『Prequel』の方は飽きんかったんです。
松田:でも、これもカメラ目線ばっかりじゃない(笑)。
藤井:カメラ目線というか、恋人だよ。恋人目線だよ、全部。
北條:まぁ、それも高度な話ですね。恋人目線だからだよ、って、そんならカメラ目線でもいいね、とはならない、10回目のレベルの高さですね。そう思いません?
松田:確かに、それもそうだね。
北條:10年前やったら、「まぁ、いいか! カメラ目線でも。恋人目線だから!」ってなってた。
松田:でも、6、7回目くらいまでは、「好き好き写真集(本コンテストにおいて、初期から使われてきた造語。“読者の目線を気にすることなく、あくまでも私的に、好きなモデルをとことん追いかけた写真集”の意)」と言われていたものが、今回の応募作品ではほとんど皆無に近い(笑)。そんな中、この『Contrail-Prequel』はある種の「好き好き写真集」だと思うんだよ。でも、ここまでレベル高く語ってくれるとね、これはもう評価せざるを得ないですね」
藤井:でも、これは一方通行のような「好き好き写真集」じゃないですね。カメラ目線だけど、写っている彼女と、撮り手=写真集を見る人がつねにそこで会話してる、っていう感じだよね。
コバヤシ:うまいのよ、そこが。
藤井:それは、カメラマンとモデルの関係性のよさが表れているんでしょうね。
コバヤシ:それがまた悪目立ちしてないのがいいね。
北條:波長が合いながら創作活動ができる、ってことでね、非常に幸せやなぁ。
松田:幸せな関係ですね。
藤井:では、準優秀賞の作品講評に移りましょう。準優秀賞は2作品。まずはこの私的写真集選手権ではすっかりおなじみとなった哲郎さんの『ニャンニャン娘 -裏ふぅさんぽ旅-』です。この作品は、作者が飼い猫の「ふぅちゃん」を連れて、北海道から沖縄まで様々な場所で撮影した、ふぅちゃんの冒険記録ともいえる旅の写真集です。哲朗さんは、2017年の『隠 -kakure2- 2年後の情事』から、『吉原登楼記』、『色街猫』、『男の美学』、そして今回と5年連続の入賞となりました。
松田:私的写真集選手権を通して、こんなに写真がうまくなった人は他にいないんじゃないかな。
北條:この、哲郎さんという人が、この大会を覚醒させてしまいましたね。
藤井:ある意味、“ミスター私的写真集”ですね(笑)。
コバヤシ:作者の哲朗さんはTwitterでこのふぅちゃんの写真や動画を毎日上げているから、この写真集のラストで語られる、ふぅちゃんがいなくなってしまったという事実は知っていたんですが、その後にこんなストーリーがあったのかとびっくりしました。
北條:モンスターをモンスターたらしめるのは、真面目さというのもすごく感じます、この方を見ていると。
松田:すごく真面目なんです、根は。
北條:マメで真面目かどうか。ただのモンスターなりっぱなしで終わっちゃう人間と、作家の差はそういうところで決まる。
松田:真面目さと情熱ですね。かっこよさとか、そういうものとは無縁だけど…。
藤井:今回、すべての応募作品の中で、唯一声をあげて笑っちゃったんですよね、この作品。普通は、ふうちゃんを連れていろいろなところに行きました…で、一冊作る。だけど、この方には、ちゃんとラストにあるような事件が起きて、そして、それが予想外の展開で解決されるという運を持っているんだと思う。もう、ミラクル!
北條:それはね、アンテナを張っているんですよ、ちゃんと真面目に。旅行先でね、すぐ「ネコを探しています」の貼り紙を作ること自体がそうですよ。
松田:あとね、作者にとってはふぅちゃんが娘であり、彼女であり、奥さんであって、愛してやまないふぅちゃんへの愛の気持ちの出口が、この写真集であるというのがおもしろいなと思うんだよね。猫をかわいがっている気持ちに、きちんと出口を作っている感じが(笑)。
北條:哲朗さんはここから5年、10年単位でまたすさまじいものを作ると思うんですけどね。
松田:作って欲しいですね。たとえ私的写真集選手権がなくなっても。
藤井:では、準優秀賞のもうひと作品。嘉-yoshi-さんの『私は、ありあまる。』に話題を移しましょう。こちらはモデル・こだまさんを捉えた写真集で、ストーリーや文字を排除し、ロケーションの変化やパートごとのトーンの統一、巧みな写真配置などに工夫を凝らし、ひたすら「見せる」ことに特化した作品です。
コバヤシ:嘉-yoshi-さんはコンスタントに、いい写真を撮るアマチュアさんで、誰を撮っても、そつがなくてうまいの。彼の作品づくりの真骨頂は、黒い風船とか、アイディアを使ったりするところにあるんだけれども、僕はこだまさんとのコンビが一番いいと思っています。なぜなら、アイディアなしで、二人の力だけでいいものができているから。
松田:そう! 僕もそう思った。
コバヤシ:アイディアを駆使して撮るのも象徴的でいいけれど、それ一辺倒だとどうしても策に溺れている感じを受けたりする。でも、この作品にはそういうものが微塵も感じられない。
藤井:写真集としての質の良さも目を引きました。一枚一枚の写真はもちろんうまいし、よくセレクトされていると思いますが、写真の並びや配置もとても気持ちがいい。ストーリーはないけれど、緩やかな起承転結を感じさせてくれるし。紙自体の手触りもよくて、写真の柔らかい光やトーンを増幅してくれていると思う。
コバヤシ:僕は思うんだけど、ポートレートのおもしろさを、彼は体現していると思う。もちろん、ラブラブな作品もポートレートだけれども、『私は、ありあまる。』のように普通に撮って何か違う、っていうカメラアイ、技術…そういうことを、彼はすごく体現してる人だと思う。
藤井:では、続いて各審査員賞に輝いた皆さんの作品について見てみましょう。まずはコバヤシモトユキ賞から。Koji Hiroseさんの『猫かぶり乙女』です。恋に落ちた乙女のもとにだけ現れる猫。乙女は猫をかぶって彼氏に会いに行く…というストーリー。実際にモデル・安中榛名さんが手製の猫を頭にかぶっているのがミソです。
コバヤシ:真面目な写真をずっと見ていると、「なんでこんなネコかぶってるんだ!」って逆にやられたんだよなぁ(笑)。作者のKoji Hiroseさんは撮影技術が非常に高い方。そんな人が、バカをやる。そのおもしろさ!「なに、このバカな写真は!?」ってなるんだけど、でも、そこはかとなくうまいのが伝わってくる。
藤井:ライトなストーリーなんだけど、わかりやすいし、ちゃんとカタルシスがあって(笑)。しかも、モデルの子のかわいい写真も、かわいくちゃんと掲載されていて、よくできていると思います。ちょっとした絵本だと思えば、とてもかわいくて好きですね。
コバヤシ:あとは、「好き好き写真」の源流にもあるよね。このライト感覚。
藤井:ちょうどいい塩梅だと思いますね。では、続いて松田忠雄賞にいきましょう。こちらも過去、最優秀賞をはじめとして何度も入賞している篠山吉信さんの作品『Tokyo Shady.』です。ストーリー仕立てですが、モデルのゆんさんは要所要所で印象的なポートレートとして登場し、全編を形成しているのは心象風景を表すような陰影の濃いモノクロのスナップ写真。闇に閉ざされた若い世代へのメッセージが込められた作品です。
松田:この作品で、きっちんさんのネクストステージが見えたかなと思って、いいなと思いました。女の子を使ってストーリーを組むというやり方は従来と一緒ですが、女の子以外の写真に新しい芸風が出てきたのかなという気がします。写真集の最後に、コロナ禍にあって若者たちの夢がなくなっているといった現実に触れ、彼らに対するメッセージが書いてありますが、その部分は審査員の間でも賛否が分かれました。でも、僕は女の子が写ってない、モノクロの暗いトーンの写真から、違和感なくそのメッセージに導けているのは、やはり写真に力があるからだと思います。取り上げたテーマも、一番気になったテーマでもあります。人が死んじゃう、っていうことに対してね。希望がないとか、生活ができなくなると、人は死んじゃうんだというのを、すごく憂いたし、それに対して反応しているところに僕は感動しました。それをちゃんと、写真を使って伝えているというのは、さすがだと思います。で、最後は笑顔で締めくくっているところもいいな、と。
北條:最後の笑顔がめっちゃパンチありますね。
松田:要は編集力ですよね。この笑顔が撮れないのかと言われたら、撮れると思うんだけど、その前段階の暗さが、笑顔の伏線になるっていう。見せ方ですよね。それが写真集のおもしろさかな、と思いました。
コバヤシ:いい写真だけをガーッてつないで、力技でやったんだと思う。以前は、こういうものを綿密に計算して作っていたと思う。でも、今回のやつは、自分なりにいいと思う写真で組んで、メッセージをグイッと入れて、力技の。「篠山だ〜!」「俺がきっちんだ〜!」っていう感じがする。意地とか、想いとか、熱いと思うよ。熱い男だな、と思います。
松田:それをちょっとね、わざと女の子の分量を少なくしてやっているあたりが、おもしろいなと思いました。
コバヤシ:もっと少なくてもいいな、と思ったけど。
松田:そうね。それは思った。だから、ちょっと過渡期なんだろうな、という気がします。また続きを絶対見たいんだけど。
コバヤシ:みんな、ポートレートを撮れるようになると、まずは自分の好きな女の子を主人公にした小説みたいな本を作りたいと思う。それから段々と、きっちんさんみたいな、写真がメインの写真集に気持ちが移っていくという傾向がある。
藤井:モノローグに対する説明写真でも挿絵でもなく、心象風景のように見えるところに、きっちんさんの力量を感じますね。
コバヤシ:モデルを撮ろうが、風景を撮ろうが、根本的に写真がうまいから、必ず賞レースに入ってきますね。賞レースに入ってくるということで言えば、_Waiwanさんは、自分のメッセージではなくて、女子の側の立場みたいなのを巧みに使ってくる作家さんですね。僕なんかは、アマチュアさんが応募してくるというよりは、作家さんが私的写真集を並べてくるなぁ、っていうふうに見てますけどね。
藤井:せっかく話がそちらにいったので、入賞は逃しましたが、_Waiwanさんの作品『G線上のア・リ・ア』と『Auvergne-Tokyo』はどうでしたか?
コバヤシ:『Auvergne-Tokyo』は前回の、リモート恋愛をテーマにしたものの続編だと思うんですけども、写っている彼女は、フランスにいるので。
藤井:本当にフランスにいるんですか?
コバヤシ:本当にフランスにいるんです。だから、撮りようがないので、その人のセルフ写真を取り入れたものというか。
藤井:これは、つないで、向こう側でポーズ撮って、撮影しているんですかね。リアルタイムで。
コバヤシ:そこまではわからないですけど。
藤井:でもそうですよね、どう考えたって。
コバヤシ:いや、写真を送ってきて、こっちで構成してるんだと思いますよ。
藤井:えーっ!?
松田:じゃないと、こんなに構成できない気がする。このブツ撮りレベルは意外と大変だよ。
藤井:では、話を入賞作品に戻して、今度は北條俊正賞です。田付潤之朗さんの『倭し うるはし』です。奈良県の風景を撮り始めて二十年という作者が厳選した、春夏秋冬それぞれの倭の国の風景58点が収録されています。手作りで印刷・製本を行った写真集です。
北條:いいなぁ、曽爾村なんかに行って。いいとこですよ。僕、大阪やから、飛鳥村とか近いわけですよ。大阪芸大が大阪と奈良の県境なもんですからね。馴染みのあるところで、こんなところでひもすがら、カメラ持って、いいなぁ〜。
藤井:田付さんは長年撮影されている方だけに作品はたくさんあるだろうから、この『倭し うるはし』が集大成かどうかっていうのはわかりませんが、編んだものとしては相当力が入ってるものだろうな、と思います。
北條:モトユキさんがよく言う「どの写真集を買いたいか?」という言葉を借りれば、僕はこの写真集を買いたいと思って選びましたね。
藤井:さあ、ここまでが入賞作品の講評でした。では、ここからは惜しくも入賞には至らなかったけれども、比較的評価の高かった作品について見ていきましょうか。最初に話題にするとしたら、やはりキャン・ナカムラさんの『Seventeen』ですかね。僕も好きです。
松田:偶然、北條さんがモデルさんをご存知だったそうで。
北條:まぁ、大きなってからにぃ〜って思いますね。
藤井:この子がかわいいですよね(笑)。
松田:絶賛です!
藤井:「かわいいは正義」ですよ(笑)。僕は今回、どれを買う? って訊かれたら、これを買うって答えますよ。『Seventeen』を(笑)。
松田:かわいいし、ちょっといやらしい。
藤井:そうなんだよね! ちょっといやらしいんですよね。脱いでるとかそういうのではなくて。キャン・ナカムラさんは『夜の蝶』もいいですよね。
松田:『夜の蝶』の方も大好きですよ。『Seventeen』と両極端ですよね。芸の幅が広いです。
コバヤシ:僕も『夜の蝶』は好きだな。
松田:夜の女の子が、昼間の人になっていく様なんですけど。夜のまんまでいてほしかったなぁ、っていう(笑)。
藤井:同感!(笑)とても正しい作り方をしているんだけど、あえて、夜の女のままでいて、自分の彼氏を盗った若い女に嫌がらせをするぐらいの…。そんな展開が欲しかったなあ(笑)。
コバヤシ:尾陽唯一さんの『名前のない愛』はどうですか? これ僕、好きだけど。昔は裸は全然ダメだったんだけど、最近見られるようになってきて…。この作品は、新しい尾陽さんの始まりだと思うんだよね。
松田:ドキュメンタリーとしてまとめようとしてる感じはすごくおもしろいですね。で、ブレていたり、ピントが合ってないのもあったり。臨場感というか、リアルな感じを作っている。
コバヤシ:あと、稲留淳さんの『草原のソナタ』も気になるんですけど。ピアニストを撮影した作品ですが、個人的に僕が今、声楽家とか、ピアニストとかを撮っていたりするから、音を視覚化するということに非常に敏感なんです。
松田:僕、こっそり録音するの好きですよ。
藤井:なんの録音してるんですか(笑)。
コバヤシ:ブレとかそういうところで、音を表現してるのがおもしろい。ただ、花はやっぱり、もったいなかったな、っていう気がするけど。
松田:僕のおすすめは、ヨシザワナオヤさんの『T-SHIRT×GIRL×MUSIC』。様々なフェスで購入したTシャツを女の子に着せては、ちょっとエッチな写真を撮る、っていう。おそらく、すごい時間をかけて撮ってるよ。その集大成という感じで、いいなぁと。
藤井:時間と労力をかけているというのは、とにかく伝わってくる。その重みみたいなものを感じますよ。
松田:でも、自分の好きなTシャツをコレクションしておくのに、女の子の写真で残すという、趣味と趣味の重ね合わせというのはすごくいい出口だなと思います。Tシャツコレクターの喜び、みたいな。ポップだと思いますよ。ある時代のあるポップさから抜け出してないって言われたらそれまでだけど(笑)。
藤井:いいと思いますよ。とてもエロいし。
松田:そう、エロいからいいんですよ。『ちんかめ』と言われると、まあ身も蓋もないんだけど。
藤井:でも、『ちんかめ』というより、今時の写真ですよね。
松田:そう! ちょっと軽めのね。
藤井:さて、入賞作品以外の気になる作品を見てきましたが、最後に10年間続けてきたこの私的写真集選手権について、ひと言お願いします。
北條:きっちんさんや_Waiwanさん、哲朗さんらは、私的写真集選手権で得たものを引き継いで、みんなそれぞれのコミュニティでやってるんやないかと思います。
松田:10年やるとね。
北條:私的写真集のイズムたるものを、応募している人が引き継いでいるという。
藤井:まぁそうだね。いろんなグループ展で、みんな写真集を並べているしね(笑)。
コバヤシ:きっちんさんや_Waiwanさんは、ポートレートのグループ展を引っ張っているよね。
藤井:私的写真集選手権がどこまで今の流れに影響を与えたのかはわかりませんが、少なくとも、10年経って当初思い描いたことが現実になっているというのは素晴らしいことだとと思います。私的写真集選手権もある程度、目的を達したということになるんでしょうね。
松田:でも、写真集のコンペティションはどこかでやってほしいけどね。誰かにつなげられないかなぁ?
藤井:うちで続けたい! という団体があったら、僕に連絡してください(笑)。では、名残惜しいですが審査員の皆さま、ひとまず10年間ありがとうございました! 今年10月19日(火)~24日(日)に渋谷ギャラリー・ルデコで開催する「写真展『私的写真集選手権』Vol.9」でまたお会いしましょう。

第10回私的写真集選手権には55作品の応募があり、本誌8月号で発表した通り、最優秀賞をはじめとする各賞が決定しました。受賞された皆さま、おめでとうございます。また、ご応募いただいた皆さま、ありがとうございました。

ここでは審査にあたったコバヤシモトユキ氏、松田忠雄氏、北條俊正氏、本誌編集長・藤井による講評座談会の採録を掲載致します。

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本誌編集長・藤井(以下、藤井):10年目を迎えた今回、残念ながら最後の私的写真集選手権となりました。

コバヤシモトユキ(以下、コバヤシ):むしろよく続きましたね!

藤井:本当ですね。初めは、Twitterで「オリジナル写真集のフリーマーケットのようなものができないか」とつぶやいたのが発端でした。「私的」と名付けたのはモトユキさん。

コバヤシ:その時、アシスタントが中国籍の人だったんで、「私的」ってつけたの。そしたら、藤井さんが、「選手権にしましょう!」って言ったんだよね。

藤井:いきなりフリーマーケットでは作品が集まらないだろうから、コンテストにしようと思ったんです。今となっては、アマチュアの人がみな写真展などでオリジナルの写真集を販売してますよね(笑)。

北條俊正(以下、北條):そう。10年ですっかり状況が変わった。

松田忠雄(以下、松田):始まったよね。

北條:しかも、それで生計を立てている人すらいる。

松田:同人写真集即売会の「ノンバーコードブックス」とかもそうだしね。素晴らしい写真集文化を牽引したんじゃないですか?

藤井:そうですね、そしてひとまず今回で役割を終えるという。では、その最後の私的写真集選手権の審査を終えて、入賞した作品を中心に講評していただきましょう。第10回の最優秀賞はbagleさんの『Contrail-Prequel(コントレイル・プリークエル)』が受賞しました。四季を通じて様々なロケーションで捉えられたモデル・麻巳子さんのポートレートと、風景や事物を捉えた写真で綴る100ページにも及ぶ大著です。この『Contrail-Prequel』が「前編」にあたり、さらに同じボリュームの『Sequel』(後編)があるわけですが、『Sequel』も審査では高得点でした。

コバヤシ:この二冊はどっちが受賞してもおかしくないという感じですね。

藤井:どんなところがよかったですか?

コバヤシ:撮れないよね、プロでは。僕はプロが撮れるものにわざわざ賞をあげるのは違うな、と思っているので。プロが撮れないような、何かの可能性をいつも見てるわけなんです。で、僕にはこれは撮れない。リスペクト! リスペクトです!

北條:モデルの麻巳子さんの技術に脱帽ですね。「画面の中に生きる」というコツを知っておられる方ですよね。天性の感じがする。

藤井:僕は写真審査でもそうだけど、あまりモデルが誰というところに頓着なく作品に埋没してしまいがちだから、最初、てっきり若い夫婦のイチャラブかなって思ったぐらい(笑)。親密な雰囲気が演出されていて、そこにびっくりした。だから、北條さんが言うように、創作の中で活き活きと生きているというのはよくわかる。

北條:モデルとしてもそんなに簡単なことじゃないですよね、そんなこと。映画とかじゃないから、カメラの周りにスタッフやら音響やらがわんさかいるわけじゃない。カメラマンと一対一やったりもするやろうけど、そんなふうにレンズを向けられて、普通に呼吸したり、そこからそこまで歩く、という行為が普通の人間にはできないんです。だけど、それをやりきってるわけで。天才やんけ!

コバヤシ:彼女は僕も撮影したことがあるけれど、撮れないですよ。それは撮った彼の力です。bagleさんの力。

北條:表情の一個一個というよりも、このモデルさん、心拍数を自分でコントロールできているように思う。なかなかむずいんですよ。相当の運動神経がないと! もちろん撮影者のカメラマンさんもめっちゃうまいですよ、そりゃ。

藤井:うまいよね。

コバヤシ:でも、普通は同じようなものを2冊応募すると、打ち消しあっちゃって、印象に残りにくくなったりするものだけど、bagleさんのは二つとも、いいよね。

松田:それにしてもここまでモデルに話が及ぶ写真集も珍しいよね。今までにないんじゃないかな。確かに素晴らしいモデルだと思うし、写真も素晴らしい。あと、デジタルとアナログを行ったり来たりしている感じも、今っぽくていいよね。

藤井:かなりのページ数だけれど、写真がうまくて飽きないですね。

北條:僕は飽きる、飽きないで言うと、『Sequel』の方はカメラ目線ばっかりやなと思って、それでちょっと飽きたんです。『Prequel』の方は飽きんかったんです。

松田:でも、これもカメラ目線ばっかりじゃない(笑)。

藤井:カメラ目線というか、恋人だよ。恋人目線だよ、全部。

北條:まぁ、それも高度な話ですね。恋人目線だからだよ、って、そんならカメラ目線でもいいね、とはならない、10回目のレベルの高さですね。そう思いません?

松田:確かに、それもそうだね。

北條:10年前やったら、「まぁ、いいか! カメラ目線でも。恋人目線だから!」ってなってた。

松田:でも、6、7回目くらいまでは、「好き好き写真集(本コンテストにおいて、初期から使われてきた造語。“読者の目線を気にすることなく、あくまでも私的に、好きなモデルをとことん追いかけた写真集”の意)」と言われていたものが、今回の応募作品ではほとんど皆無に近い(笑)。そんな中、この『Contrail-Prequel』はある種の「好き好き写真集」だと思うんだよ。でも、ここまでレベル高く語ってくれるとね、これはもう評価せざるを得ないですね」

藤井:でも、これは一方通行のような「好き好き写真集」じゃないですね。カメラ目線だけど、写っている彼女と、撮り手=写真集を見る人がつねにそこで会話してる、っていう感じだよね。

コバヤシ:うまいのよ、そこが。

藤井:それは、カメラマンとモデルの関係性のよさが表れているんでしょうね。

コバヤシ:それがまた悪目立ちしてないのがいいね。

北條:波長が合いながら創作活動ができる、ってことでね、非常に幸せやなぁ。

松田:幸せな関係ですね。

藤井:では、準優秀賞の作品講評に移りましょう。準優秀賞は2作品。まずはこの私的写真集選手権ではすっかりおなじみとなった哲朗さんの『ニャンニャン娘 -裏ふぅさんぽ旅-』です。この作品は、作者が飼い猫の「ふぅちゃん」を連れて、北海道から沖縄まで様々な場所で撮影した、ふぅちゃんの冒険記録ともいえる旅の写真集です。哲朗さんは、2017年の『隠 -kakure2- 2年後の情事』から、『吉原登楼記』『色街猫』『男の美学』、そして今回と5年連続の入賞となりました。

松田:私的写真集選手権を通して、こんなに写真がうまくなった人は他にいないんじゃないかな。

北條:この、哲朗さんという人が、この大会を覚醒させてしまいましたね。

藤井:ある意味、“ミスター私的写真集”ですね(笑)。

コバヤシ:作者の哲朗さんはTwitterでふぅちゃんの写真や動画を毎日上げているから、この写真集のラストで語られる、ふぅちゃんがいなくなってしまったという事実は知っていたんですが、その後にこんなストーリーがあったのかとびっくりしました。

北條:モンスターをモンスターたらしめるのは、真面目さというのもすごく感じます、この方を見ていると。

松田:すごく真面目なんです、根は。

北條:マメで真面目かどうか。モンスターなりっぱなしで終わっちゃう人間と、作家の差はそういうところで決まる。

松田:真面目さと情熱ですね。かっこよさとか、そういうものとは無縁だけど…。

藤井:今回、すべての応募作品の中で、唯一声をあげて笑っちゃったんですよね、この作品。普通は、ふうちゃんを連れていろいろなところに行きました…で、一冊作る。だけど、この方には、ちゃんとラストにあるような事件が起きて、そして、それが予想外の展開で解決されるという運を持っているんだと思う。もう、ミラクル!

北條:それはね、アンテナを張っているんですよ、ちゃんと真面目に。旅行先でね、すぐ「ネコを探しています」の貼り紙を作ること自体がそうですよ。

松田:あとね、作者にとってはふぅちゃんが娘であり、彼女であり、奥さんであって、愛してやまないふぅちゃんへの愛の気持ちの出口が、この写真集であるというのがおもしろいなと思うんだよね。猫をかわいがっている気持ちに、きちんと出口を作っている感じが(笑)。

北條:哲朗さんはここから5年、10年単位でまたすさまじいものを作ると思うんですけどね。

松田:作って欲しいですね。たとえ私的写真集選手権がなくなっても。

藤井:では、準優秀賞のもうひと作品。嘉-yoshi-さんの『私は、ありあまる。』に話題を移しましょう。こちらはモデル・こだまさんを捉えた写真集で、ストーリーや文字を排除し、ロケーションの変化やパートごとのトーンの統一、巧みな写真配置などに工夫を凝らし、ひたすら「見せる」ことに特化した作品です。

コバヤシ:嘉-yoshi-さんはコンスタントに、いい写真を撮るアマチュアさんで、誰を撮っても、そつがなくてうまいの。彼の作品づくりの真骨頂は、黒い風船とか、アイディアを使ったりするところにあるんだけれども、僕はこだまさんとのコンビが一番いいと思っています。なぜなら、アイディアなしで、二人の力だけでいいものができているから。

松田:そう! 僕もそう思った。

コバヤシ:アイディアを駆使して撮るのも象徴的でいいけれど、それ一辺倒だとどうしても策に溺れている感じを受けたりする。でも、この作品にはそういうものが微塵も感じられない。

藤井:写真集としての質の良さも目を引きました。一枚一枚の写真はもちろんうまいし、よくセレクトされていると思いますが、写真の並びや配置もとても気持ちがいい。ストーリーはないけれど、緩やかな起承転結を感じさせてくれるし。紙自体の手触りもよくて、写真の柔らかい光やトーンを増幅してくれていると思う。

コバヤシ:彼は、ポートレートのおもしろさを体現していると思う。もちろん、ラブラブな作品もポートレートだけれども、『私は、ありあまる。』のように普通に撮って何か違う、っていうカメラアイ、技術…そういうことを、彼はすごく体現してる人だと思う。

藤井:では、続いて各審査員賞に輝いた皆さんの作品について見てみましょう。まずはコバヤシモトユキ賞から。Koji Hiroseさんの『猫かぶり乙女』です。恋に落ちた乙女のもとにだけ現れる猫。乙女は猫をかぶって彼氏に会いに行く…というストーリー。実際にモデル・安中榛名さんが手製の猫を頭にかぶっているのがミソです。

コバヤシ:真面目な写真をずっと見ていると、「なんでこんなネコかぶってるんだ!」って逆にやられたんだよなぁ(笑)。作者のKoji Hiroseさんは撮影技術が非常に高い方。そんな人が、バカをやる。そのおもしろさ!「なに、このバカな写真は!?」ってなるんだけど、でも、そこはかとなくうまいのが伝わってくる。

藤井:ライトなストーリーなんだけど、わかりやすいし、ちゃんとカタルシスがあって(笑)。しかも、モデルの子のかわいい写真も、かわいくちゃんと掲載されていて、よくできていると思います。ちょっとした絵本だと思えば、とてもかわいくて好きですね。

コバヤシ:あとは、「好き好き写真」の源流にもあるよね。このライト感覚。

藤井:ちょうどいい塩梅だと思いますね。では、続いて松田忠雄賞にいきましょう。こちらも過去、最優秀賞をはじめとして何度も入賞している篠山吉信さんの作品『Tokyo Shady.』です。ストーリー仕立てですが、モデルのゆんさんは要所要所で印象的なポートレートとして登場し、全編を形成しているのは心象風景を表すような陰影の濃いモノクロのスナップ写真。闇に閉ざされた若い世代へのメッセージが込められた作品です。

松田:この作品で、きっちんさんのネクストステージが見えたかなと思って、いいなと思いました。女の子を使ってストーリーを組むというやり方は従来と一緒ですが、女の子以外の写真に新しい芸風が出てきたのかなという気がします。写真集の最後に、コロナ禍にあって若者たちの夢がなくなっているといった現実に触れ、彼らに対するメッセージが書いてありますが、その部分は審査員の間でも賛否が分かれました。でも、僕は女の子が写ってない、モノクロの暗いトーンの写真から、違和感なくそのメッセージに導けているのは、やはり写真に力があるからだと思います。取り上げたテーマも、一番気になったテーマでもあります。人が死んじゃう、っていうことに対してね。希望がないとか、生活ができなくなると、人は死んじゃうんだというのを、すごく憂いたし、それに対して反応しているところに僕は感動しました。それをちゃんと、写真を使って伝えているというのは、さすがだと思います。で、最後は笑顔で締めくくっているところもいいな、と。

北條:最後の笑顔がめっちゃパンチありますね。

松田:要は編集力ですよね。この笑顔が撮れないのかと言われたら、撮れると思うんだけど、その前段階の暗さが、笑顔の伏線になるっていう。見せ方ですよね。それが写真集のおもしろさかな、と思いました。

コバヤシ:いい写真だけをガーッてつないで、力技でやったんだと思う。以前は、こういうものを綿密に計算して作っていたと思う。でも、今回のやつは、自分なりにいいと思う写真で組んで、メッセージをグイッと入れて。「篠山だ〜!」「俺がきっちんだ〜!」っていう感じがする。意地とか、想いとか、熱いと思うよ。熱い男だな、と思います。

松田:それをちょっとね、わざと女の子の分量を少なくしてやっているあたりが、おもしろいなと思いました。

コバヤシ:もっと少なくてもいいな、と思ったけど。

松田:そうね。それは思った。だから、ちょっと過渡期なんだろうな、という気がします。また続きを絶対見たいんだけど。

コバヤシ:みんな、ポートレートを撮れるようになると、まずは自分の好きな女の子を主人公にした小説みたいな本を作りたいと思う。それから段々と、きっちんさんみたいな、写真がメインの写真集に気持ちが移っていくという傾向がある。

藤井:モノローグに対する説明写真でも挿絵でもなく、心象風景のように見えるところに、きっちんさんの力量を感じますね。

コバヤシ:モデルを撮ろうが、風景を撮ろうが、根本的に写真がうまいから、必ず賞レースに入ってきますね。ところで、賞レースに入ってくると言えば、_Waiwanさんは自分のメッセージではなくて、女子の側の立場みたいなのを巧みに使ってくる作家さんですね。僕なんかは、アマチュアさんが応募してくるというよりは、作家さんが私的写真集を並べてくるなぁ、っていうふうに見てますけどね。

藤井:せっかく話がそちらにいったので、入賞は逃しましたが、_Waiwanさんの作品『G線上のア・リ・ア』『Auvergne-Tokyo』はどうでしたか?

コバヤシ『Auvergne-Tokyo』は前回の、リモート恋愛をテーマにしたものの続編だと思うんですけども、写っている彼女は、フランスにいるので。

藤井:本当にフランスにいるんですか?

コバヤシ:本当にフランスにいるんです。だから、撮りようがないので、その人のセルフ写真を取り入れたものというか。

藤井:これは、つないで、向こう側でポーズ撮って、撮影しているんですかね。リアルタイムで。

コバヤシ:そこまではわからないですけど。

藤井:でもそうですよね、どう考えたって。

コバヤシ:いや、写真を送ってきて、こっちで構成してるんだと思いますよ。

藤井:えーっ!?

松田:じゃないと、こんなに構成できない気がする。このブツ撮りレベルは意外と大変だよ。

藤井:いずれにしても労作ですね。では、話を入賞作品に戻して、今度は北條俊正賞です。田付潤之朗さんの『倭し うるはし』です。奈良県の風景を撮り始めて二十年という作者が厳選した、春夏秋冬それぞれの倭の国の風景58点が収録されています。手作りで印刷・製本を行った写真集です。

北條:いいなぁ、曽爾村なんかに行って。いいとこですよ。僕、大阪やから、飛鳥村とか近いわけですよ。大阪芸大が大阪と奈良の県境なもんですからね。馴染みのあるところで、こんなところでひもすがら、カメラ持って、いいなぁ〜。

藤井:田付さんは長年撮影されている方だけに作品はたくさんあるだろうから、この『倭し うるはし』が集大成かどうかっていうのはわかりませんが、編んだものとしては相当力が入ってるものだろうな、と思います。

北條:モトユキさんがよく言う「どの写真集を買いたいか?」という言葉を借りれば、僕はこの写真集を買いたいと思って選びましたね。

藤井:さあ、ここまでが入賞作品の講評でした。では、ここからは惜しくも入賞には至らなかったけれども、比較的評価の高かった作品について見ていきましょうか。最初に話題にするとしたら、やはりキャン・ナカムラさんの『Seventeen』ですかね。僕も好きです。

松田:偶然、北條さんがモデルさんをご存知だったそうで。

北條:まぁ、大きなってからにぃ〜って思いますね。

藤井:この子がかわいいですよね(笑)。

松田:絶賛です!

藤井:「かわいいは正義」ですよ(笑)。僕は今回、どれを買う? って訊かれたら、これを買うって答えますよ。『Seventeen』を(笑)。

松田:かわいいし、ちょっといやらしい。

藤井:そうなんだよね! ちょっといやらしいんですよね。脱いでるとかそういうのではなくて。キャン・ナカムラさんは『夜の蝶』もいいですよね。

松田『夜の蝶』の方も大好きですよ。『Seventeen』と両極端ですよね。芸の幅が広いです。

コバヤシ:僕も『夜の蝶』は好きだな。

松田:夜の女の子が、昼間の人になっていく様なんですけど。夜のまんまでいてほしかったなぁ、っていう(笑)。

藤井:同感!(笑)とても正しい作り方をしているんだけど、あえて、夜の女のままでいて、自分の彼氏を盗った若い女に嫌がらせをするぐらいの…。そんな展開でもよかったなあ(笑)。

コバヤシ:尾陽唯一さんの『名前のない愛』はどうですか? これ僕、好きだけど。昔は裸は全然ダメだったんだけど、最近見られるようになってきて…。この作品は、新しい尾陽さんの始まりだと思うんだよね。

松田:ドキュメンタリーとしてまとめようとしている感じがすごくおもしろいですね。で、ブレていたり、ピントが合ってないのもあったり。臨場感というか、リアルな感じを作っている。

コバヤシ:あと、稲留淳さんの『草原のソナタ』も気になるんですけど。ピアニストを撮影した作品ですが、個人的に僕が今、声楽家とか、ピアニストとかを撮っていたりするから、「音を視覚化する」ということに非常に敏感なんです。

松田:僕、こっそり録音するの好きですよ。

藤井:なんの録音してるんですか(笑)。

コバヤシ:ブレとかそういうところで、音を表現してるのがおもしろい。ただ、花はやっぱり、もったいなかったな、っていう気がするけど。

松田:僕のおすすめは、ヨシザワナオヤさんの『T-SHIRT×GIRL×MUSIC』。様々なフェスで購入したTシャツを女の子に着せては、ちょっとエッチな写真を撮る、っていう。おそらく、すごい時間をかけて撮ってるよ。その集大成という感じで、いいなぁと。

藤井:時間と労力をかけているというのは、とにかく伝わってくる。その重みみたいなものを感じますよ。

松田:でも、自分の好きなTシャツをコレクションしておくのに、女の子の写真で残すという、趣味と趣味の重ね合わせというのはすごくいい出口だなと思います。Tシャツコレクターの喜び、みたいな。ポップだと思いますよ。ある時代のあるポップさから抜け出してないって言われたらそれまでだけど(笑)。

藤井:いいと思いますよ。とてもエロいし。

松田:そう、エロいからいいんですよ。『ちんかめ』と言われると、まあ身も蓋もないんだけど。

藤井:でも、『ちんかめ』というより、今時の写真ですよね。

松田:そう! ちょっと軽めのね。

藤井:さて、入賞作品以外の気になる作品を見てきましたが、最後に10年間続けてきたこの私的写真集選手権について、ひと言お願いします。

北條:きっちんさんや_Waiwanさん、哲朗さんらは、私的写真集選手権で得たものを引き継いで、みんなそれぞれのコミュニティでやってるんやないかと思います。

松田:10年やるとね。

北條:私的写真集のイズムたるものを、応募している人が引き継いでいるという。

藤井:まぁそうだね。いろんなグループ展で、みんな写真集を並べているしね(笑)。

コバヤシ:きっちんさんや_Waiwanさんは、ポートレートのグループ展を引っ張っているよね。

藤井:私的写真集選手権がどこまで今の流れに影響を与えたのかはわかりませんが、少なくとも、10年経って当初思い描いたことが現実になっているというのは素晴らしいことだと思います。私的写真集選手権もある程度、目的を達したということになるんでしょうね。

松田:でも、写真集のコンペティションはどこかでやってほしいけどね。誰かにつなげられないかなぁ?

藤井:うちで続けたい! という団体があったら、僕に連絡してください(笑)。では、名残惜しいですが審査員の皆さま、ひとまず10年間ありがとうございました! 今年10月19日(火)~24日(日)に渋谷ギャラリー・ルデコで開催する「写真展『私的写真集選手権』Vol.9」でまたお会いしましょう。



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