イメージ:第192回審査 南伸坊さんの審査

第192回審査 南伸坊さんの審査

イラストレーター南伸坊さんによる第192回ザ・チョイスの審査が8月6日に行われました。応募者360名、作品点数は約1,300点。

暑〜い日の午後でしたが、時間より早めに伸坊さんが到着。

審査会場へご案内して一通り手順を説明したあと、すぐに審査がスタートしました。

伸坊さんは実は二度目のチョイス審査。1回目は第14回(1984年)というから実に30年ぶりです。「当時は会場が違う建物でしたよね」

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開始からしばらくは伸坊さんの目に留まる作品がなく、どんどん作品が流れていきます。

残る作品が出ないまま作品の山ひとつが消え、このまま残らないんじゃないかと不安になる頃、ようやく最初の一次通過者が。

それまでに20人以上スルーしたでしょうか。そこからは、ポツポツと作品が残るようになってきました。

残すものは「それ残します」と声をかけ、残さない時は手のジェスチャーで「残さない」と合図します。

一次審査も後半になると、残る作品の割合が増えてきました。

ジャッジは比較的スピーディーで、1時間ほどですべての作品を見終えました。

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「最初の方は“いいな”と思ってもどこか既視感のある絵は残さなかった。それだと残らないかなと思って、途中からは “いい”と思える要素が何かあれば残しました。前半と後半で判断の基準が違っていますけど、繰り返し見る中で平均化していくと思います」

コーヒーブレイクの間に、いろいろお話を伺いました。「(1984年の)1回目の審査はみんなが新しいスタイルを模索していた時代だったから、うまいなと思っても誰かに似ているものは外しましたね。今回はそれはせずに、何かひとつでもいいところがあれば残すようにしました。最初の選び方とは少し矛盾するけど、“誰かに似ている”ことをみんな恐れ過ぎている気がします。お手本を真似するのは早く上達するコツで、日本の絵描きは昔からそれをやってきた。ところが、明治時代に西洋画が入ってきた時と、(第二次大戦)終戦後の2回、それを捨てているんです」

今回の審査で一通り作品を見た印象もお聞きしました。

「即戦力になろうという感じの絵はそんなになかったかな。もっとそういうのがあっていいんだけど。“どこに使えるの?”という絵はどうしても遠回りになりますよね。(チョイスは)何を描くか自由なだけに難しい。物語性を感じさせる方が票を入れやすいというのはありますね。そういうところへの関心はどうしてもあるので」

TIS(東京イラストレーターズ・ソサエティ)の公募展や講談社のブックデザイン賞の審査員をされている伸坊さん。

「TIS公募では新しい手法を取り込んだ人が選ばれやすいかな。あと、細かく丁寧に描き込むものが選ばれやすいけど、僕はそちら(描き込み系)には厳しいです。必ずしも描き込まれた絵がいい絵とは限らない。装丁の審査は(並べた作品を)審査員が見て回って、気に入ったものに付箋をつけていくんだけど、二巡目三巡目で見方やチェックの仕方が変わる。他人が選ぶものは気にならないけど、小さいから自分で見落としてるところがあるんですよね」

以下、雑談の中から。

「ものすごい才能がある人は、最初からうまいですね。何か“ひらめき”みないなものが絵にあるんです」

「写真的にうまい絵を描く人がいますけど、うまくても“古くさい”と感じたら、そこから脱却できる人というのはあまりいない。写実的な絵というのは、評価を別にした方がいいような気がします。逆にものすごいヘタな人は、すごく上手になる可能性がある。青林堂の長井勝一社長も言ってたけど、技術的なものはだいたいみんな上手くなるんですね。描きたいものがあるってことが大事」

「コンペには運・不運もあるけど、見せ方のうまい人はいますね。“今な感じ”を出せる人。流行りのモチーフを取り入れたり、(古い手法でも)今だから新しい感じがする、ということもある」

審査再開。1回目と同じ形で二次審査が始まります。

快調なペースで進み、1回目の半分ぐらいの作品が残りました。続けて三次審査へ。同じように目の前を作品が流れて行く形。

ここまで残したものは基本的に「いい作品」なので、ポツポツ落ちて行く作品が出る程度で、多くの作品が次へ進みました。

机に並べられる量になったところで、残った作品をすべて並べてさらなる絞り込みを進めます。

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残りが30人を切ったところで最終審査へ。

過去に入選歴を持つ実力派も多く残っていましたが、この段階までにかなり落とされ、フレッシュな顔ぶれが中心となりました。

伸坊さんは作品を見て回りながら、途中で作品の並びを入れ替えて傾向の近い作品を寄せました。「この近い中から一人を残す形になると思います」

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入選と準入選を合わせた16人に絞っていき、そこから入選と準入選に振り分ける形。

20名を切ってあと数人のところでちょっと苦労しましたが、16人に絞ってからは割合スムーズに進み、開始から2時間ほどで審査が終了しました。

入選者については、作品点数とともに誌面での掲載順も決めました。結果は下記のとおりです。

入選▼

初谷佳名子(東京都)

●守屋和美(千葉県)

川崎真奈(東京都)

とやちかこ(東京都)

岡村亮太(東京都)

佐々木美穂(東京都)

竜川恵奈(東京都)

杉本鉄郎(茨城県)

いとうひでみ(東京都)

● トムラヒロ(東京都)

準入選▼

栄桂あい、大野博美、前田泰子、楓真知子(以上東京都)高安イクミ(沖縄県)若林哲博(石川県)

最終選考まで残った人々▼

平井利和、本村綾、井内愛、小山和哉、山崎カズヒコ、大村えつこ、オニザワケイ、杉山ひろのり(以上東京都)佐藤芳(神奈川県)ミナ・ヌクッタ(千葉県)遠藤理子(北海道)

入選・準入選作品と南伸坊さんの講評は10月18日のイラストレーションNo.204に掲載いたします。


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